一万時間の法則

マルコム・グラッドウェルが「天才!成功する人の法則」という本の中で「一万時間の法則」ということを唱えている。これは、どんな分野でも、一万時間の練習を積めば達人(その世界のトップ)になれるよと言うもので、人々の心を大いにくすぐった。

一万時間といえば膨大な練習量のように思えるが、桐朋学園に演奏家志願で入ってくる学生たちを調べレ見ると、楽器演奏で優秀な者たちは、一万時間を遥かに超える練習を積んできている。それにもかかわらず、彼ら彼女たちは、まだ演奏家になるためのスタートライに並んだ程度である。とても演奏の達人や天才などと呼べるようなレベルではない。単に可能性を秘めているという程度のものである。

この「一万時間の法則」という耳にいい響きの言葉は、一万時間という数字には何の根拠もないということである。ただ、いい方向に解釈すると、才能などというものはなく、長時間の計画された練習を積まないとその道のトップには上り詰めることができないということは確かである。

どの分野でも努力もしないで、トップまでいった者は一人もいない。トップまでいった者は、すべて気の遠くなるような努力を積み重ねてきているということである。それを「一万時間」と言い換えているなら納得できる。

しかし、注意しなければならないのは、時間つぶしのような練習を一万時間続けても何の進歩もしていないということである。要は練習の取り組み内容が大事で、集中した練習でなければ役に立たないし、上達するために計画された練習でなければ役に立たないということである。「一万時間の法則」という甘い言葉で、ただ練習時間を積み重ねても、ほぼ効果は期待できないということである。

 

よく注意しないと、世の中には甘い言葉が多いから。